「WLBは怠惰」と語る経営者の会社、株式会社クルイトの求人票の実態は?
投資・金融こんにちは。最近、X(旧Twitter)で話題になった投稿が、私の心に強く刺さりました。それは、経営者の「正直な」発言と、その会社の求人内容のギャップを鋭く突いたものです。今日は、現代の労働環境、特に「固定残業代制度」の問題と、ワークライフバランスをめぐる経営者の矛盾について考えていきたいと思います。
X投稿の舞台裏:何が起こったのか?
2025年12月2日、Xユーザー@kaorurmpomさんが投稿した内容が、瞬く間に拡散されました。投稿の本文はシンプルながら衝撃的でした。
この投稿には、株式会社クルイトの求人票のスクリーンショットが添付されていました。クルイト社といえば、CEOの@Kazumasa_Sekoさんが「令和の虎」出演者として知られる、教育業界のベンチャー企業です。
投稿は、CEOの過去の発言を引用していました。その内容は以下の通り:
ワークライフバランスって言ってるやつで優秀なやつ1人も見た事がない。逆に、仕事ができない市場価値が低いやつほどこの言葉をよく出してくる。ワークライフバランスはサラリーマンである限りほぼ実現は不可能。血と汗と涙を流し、市場価値を上げ切った先に真のワークライフバランスが待っている。若手の言う軽いワークライフバランスのほとんどは、ただの怠惰で価値はない。
この「シバキ系」発言自体は、ネット上で賛否両論を呼んでいましたが、問題はここからです。投稿が引用した求人票を見ると、CEOの言葉とは対照的な「低待遇」が露呈しました。
投稿の反響:わずか1日で1万1千以上のいいね、1500以上のリポストを獲得。リプライ欄では「固定残業45時間はヤバい」「優秀な人は応募しない」「ワーキングプアの温床」といった声が殺到しました。
求人票の詳細:低賃金と固定残業の実態
具体的に求人票の内容を見ていきましょう。
1. 新卒・大卒向けポジション
- 年収:320万円~
- 月給:266,667円~(固定残業代を含む)
- 固定残業代:45時間分を含む
- 勤務時間:11:00~20:00(実働8時間、休憩1時間)
- 休日:完全週休2日制、年間120日
東京の最低賃金を考えると、月給266,667円は決して高くありません。さらに固定残業45時間分を含むと、時給換算で1,000円前後になる計算です。残業なしでこの給与なら許容範囲ですが、「残業前提」の表記が気になります。
2. 経験者向けポジション
- 年収:400万円~
- 勤務時間:13:00~22:00(実働8時間、休憩1時間)
- 休日:土日祝+年間120日休暇(GW・夏季休暇あり)
- 福利厚生:社会保険完備、交通費支給
夜遅くまで働くシフト。教育業界らしい勤務時間ですが、WLBを否定するCEOの会社でこの労働条件というのは、どうなのでしょうか。
3. 専門職ポジション
- 年収:400~500万円
- 勤務時間:10:00~19:00(実働8時間)
- 休日:土日祝、GW・夏季・年末年始休暇
- 想定残業:20~30時間/月
| 項目 | 新卒 | 経験者 | 専門職 |
|---|---|---|---|
| 年収 | 320万円~ | 400万円~ | 400~500万円 |
| 月給 | 266,667円~ | 年収ベース | 年収ベース |
| 固定残業 | 45時間分 | 不明 | 20~30時間想定 |
| 勤務時間 | 11:00~20:00 | 13:00~22:00 | 10:00~19:00 |
| 年間休日 | 120日 | 120日 | 120日 |
なぜこれが問題か?固定残業代の「隠れたブラック」構造
この事例は氷山の一角です。日本の求人市場で「固定残業代」が横行する理由を考えてみましょう。
コストカット目的
企業側は残業代を「固定」で吸収し、人件費を抑えます。結果、労働者は「残業前提」で働く羽目になります。
WLBの幻想
CEOのような「シバキ体質」の経営者が増え、「残業=美徳」と勘違いするケースが見られます。実際、OECDデータでは、日本人の平均年間労働時間は1,600時間超で、先進国トップクラスです。
優秀人材の流出
低賃金+長時間労働では、優秀な人材は集まりません。投稿のリプライでも「市場価値の高い人は、こんな求人に応募しない」との声が多数ありました。
厚生労働省のガイドラインでは、固定残業代は「労働者の理解を得て」導入可能とされていますが、事前の説明不足が問題視されています。
経営者の言葉と現実のギャップ:本当の「市場価値」とは?
CEOの発言には一理あるかもしれません。スタートアップでは、初期の苦労が報われるケースもあります。しかし、それが「WLBは怠惰」と一刀両断するのは乱暴です。
真のワークライフバランス
市場価値を上げるための「投資」として休養を取る。GoogleやMicrosoftのように、柔軟な勤務で生産性を高める企業が増えています。
この事例の教訓
経営者が社員に求める「努力」は、自分たちも実践すべきです。低賃金で人を集めても、離職率が上がるだけではないでしょうか。
あなたへ:求人選びのアドバイス
この投稿を見て、就活中の方に伝えたいことがあります。
固定残業代をチェック:「45時間分含む」表記は要注意。面接で「実際の残業時間は?」と必ず聞きましょう。
年収だけでなく、トータルで評価:休日数、福利厚生、成長機会を総合的に判断しましょう。
自分の価値を知る:WLBを求めるのは「怠惰」ではありません。持続可能な働き方が、長期的に市場価値を高めます。
もし気になる求人があれば、応募前に会社の口コミ(OpenWorkなど)を調べてみてください。ブラック企業を避ける第一歩です。
まとめ:本物の「優秀さ」を求めるなら、待遇改革を
この投稿は、ただの「暴露」ではなく、社会への警鐘です。経営者と労働者の「対価のバランス」を再考するきっかけになりました。
あなたはどう思いますか?ぜひコメントで意見を聞かせてください。
参考:元のX投稿 @kaorurmpom